日本語教師もりす

タイのチェンマイ在住の日本人のブログです。日本語教師をしています。

日本語で日本語を教える(直接法)

こんにちは、日本語教師もりすです。

今回は、外国語話者に日本語を教えることについてまとめてみます。

特に、教える側が生徒の母語を理解できる場合についてです。

言い換えれば、もしあなたが中国語を話せるなら、中国語話者にどのように日本語を教えられるでしょうか。

もしあなたが英語を話せるなら、英語話者にどのように英語を教えられるでしょうか。

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学習者の言葉を理解する教師

外国語を学ぶためにも、この記事から上達のヒントが得られるかもしれません。

 

直接法と間接法

さてまず初めに、外国語教育について興味のある方であれば、直接法間接法という2種類の教授法をご存じかと思います。

直接法とは、例えば日本語を日本語だけで教える、英語を英語だけで学ぶ、というようなことです。絵やカード、慣れてくれば教科書の文章を使って、目標言語だけで会話して教授あるいは学習します。

一方、間接法とは、例えば英語を使って日本語を教える、英語を日本語の文法説明で学ぶ、というようなことです。日本の多くの公立学校の英語教育がこれに当てはまります。

それぞれの学習法にメリットがあります。

直接法を使えば、学習者は目標言語を使って考えるので、話す時も母語で考えずに目標言語を即座に使いやすくなります。例えば、りんごの絵を見て、「これは何ですか」「りんごです」という会話をします。英語話者にAppleという単語を思い起こさせません。

間接法を使えば、学習者は文法の細かなニュアンスをつかむことができます。例えば、「これは何ですか」という日本語の文章を、英語を使って説明します。

Japanese grammar is something like “This what is”, in order to express the idea of “what is this?” You can focus on the order of Japanese subject and verb.

私の場合は、日本語を日本語で教える直接法を使っています。

さらに、自分が外国語を学ぶ時も、極力、直接法で学びます。例えば中国語を中国語で、タイ語タイ語でという感じです。

直接法で気をつけなければならないこと

外国語を習得するにあたって、これが絶対正解という道はありません。

しかし、無駄な道と思われるものはいくつかあります。

その典型的な例が、直接法で教えているのに、不要な場面で学生の母語を使ってしまうことです。

例えば、日本語を使って日本語を教えているのに、急に中国語を使ってしまうと、中国語が母語の学習者は頭の中で中国語で考え始めてしまい、混乱しますし、伸び悩みます。

では、直接法で教える上で、大切なのは何でしょうか。

学習者の不断の努力と、教える側の忍耐力です。

忍耐力はどのように示されるでしょうか。

直接法で教授すると、学習者が言いよどむ場面に何度も直面します。

頭には伝えたい概念が浮かぶのですが、適切な日本語が見つからない場面です。

例えば、学習者が「羨ましい」という概念を言いたいとしましょう。

学習者:「えーと、あの、何でしたっけ、彼がとても上手ですごいから、私はえーと、彼を、んー」。

ここで、「あー、envy?」とか、「羡慕他?」とかすぐに教えると伸びません。「羨む?」と日本語で答えをすぐに教えるのも最善とは言えません。

一番いいのは、忍耐です。学習者の判断を待ちます。

待つと、ある生徒は言い換えを行います。

学習者:「彼を、んー、彼みたいになりたいです」。

ここで学習者を褒めます。「うん、よく伝わりますよ」。だって実際、ほぼ同じ概念を伝えられてますから。しかし、教える側は「羨む」とメモしておきます。そして、一連の会話が終わってから確認します。「先程は、羨むということを言いたかったのかな?你羡慕他?」。この方法を使うことで、学習者の脳の中では、「羨むとは、彼みたいになりたいと思うこと」という自分なりの日本語辞書ができあがります。忍耐が生み出すのは、学習者の頭の新しい回路です。

待つと、別の生徒は辞書を調べます。

学習者:「えーと、ちょっと待って」。

学習者:(辞書を調べ)「あ、見つけました、彼を羨みます」。

このタイミングで教師は、「おー、なるほど、彼のことが羨ましいんですね?」と正しく繰り返します。「はい、彼のことが羨ましいです」。忍耐によって、生徒の努力が引き出され、努力の結果を修正してあげることで学習者は覚えます。このタイプの生徒の場合、もう一度確認してあげると伸びやすいです。

教師:「どんな時に誰かを羨ましくなりますか」。

学習者:「えーと、あ、分かりました、はい……」(説明を始める)

会話の中で、この学習者は高い確率で「羨む」の使い方をマスターします。

待つと、さらに別の生徒は質問してきます。

学習者:「先生、羡慕、何と言いますか」。

教師:「羨むですね」。

学習者:「羨む、そうそう」。

このタイプの生徒は、授業後に復習するタイプです。先生との会話で時間を有効に使いたくて、元々自分が知らない単語については即座に答えを質問します。こういう生徒にはすぐに教えてあげると、生徒がとても喜びます。その代わりに、宿題として、「羨む」を使った文章を作ることを出すなら、有効です。

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日本語初級学習者

教師はどのタイミングで学習者の言語を使うか

初級の日本語学習者に日本語を教える場合、ありがちなのが次のような会話です。

教師:「こんにちは。お元気ですか?」

学習者:「こんにちは、先生。元気です。先生は?」

教師:「私も元気です。我也很好」。

学習者:「うん」。

教師:「では、今日はですね、この内容を……」。

途中に何げなく挟んだ中国語がいただけません。教師としてはおそらく、学習者にリラックスしてほしいだけなんですが、学習者からすると、せっかくの日本語での一連の会話に中国語が混ざってしまいました。

直接法において大事なのは、目標言語における自然な会話の流れを体験することです。

実のところ、もし仮に学習者が「私も元気です」の意味を理解しなかったとしても、問題ありません。(そんなはずはないでしょうが、仮にです)。

大切なのは、学習者が、「先生は?」と質問したら「私も元気です」と答える流れを学ぶことです。この思考の過程において、母語は必要ありません。

少しレベルを上げて考えてみましょう。

教師:「日本に行ったことがありますか」。

学習者:「はい、2回行ったことがあります」。

教師:「どこに行きましたか」。

学習者:「えーと、東京(とうきょー)と、んー、大阪(DaBan)。関西の」。

教師:「そうなんですね。そこで、何をしましたか」。

学習者:「東京タワーとか動物園とか。えーと、たこ焼きを食べました」。

教師:「へぇ、たこ焼きは東京で食べましたか?それとも、大阪(おおさか)で食べましたか」。

学習者:「そうそう、大阪(おおさか)です。大阪の食べ物がおいしかったです」。

 私のこだわりは、学習者が中国語を混ぜたタイミングで、すぐに翻訳してあげずに、日本語の会話を続けることです。

目的は、学習者の頭の中をなるべく「日本語脳」に保つためです。

これは意外と、教師の決意と忍耐力が必要です。

イメージはとにかく直接法のメリットを生かすことです。

教師は学習者の頭を翻訳するのではなく、できるかぎり、学習者が教師の発言から日本語を思い出すように仕向けます。

直接法における、本物の日本語教師と一般の日本人との違いは、学習者との日本語の会話の中で、どれだけ学習者の頭の中をイメージできるかどうかではないでしょうか。

この一連の中で教師は、「大阪(DaBan)とは大阪(おおさか)のことです」とは一言も言っていません。これもポイントです。

教師が学習者の言語を理解できる場合、学習者の悩みを目標言語でいかに解決してあげられるかに注意を注ぐとよいと思います。

決しておすすめしないのは、即座に学習者の言語を翻訳してしまうことです。

それをしてしまうぐらいなら、直接法はやめましょう。あるいは、教師が学習者の言語を理解できないほうがましだと思います。

直接法で新たな言語を学ぶには

ここからは自分が学習者になって、直接法のメリットを当てはめてみましょう。

どうすれば効率よく直接法で学べるでしょうか。

大事なのは、学習者の不断の努力と、教える側の忍耐力ですから、学ぶ側の個人学習が欠かせません。

レッスンの時に文法や単語を学ぶのではなく、レッスンの前に予習し覚えます。そして覚えた表現をレッスンで試します。教師に直された場合は、復習し、正しい形式で覚え直し、次のレッスンで教師に再確認します。

それに加えて、教師選びです。

直接法で教えたことのある先生を選びましょう。

言語がうまいかどうかは、さほど重要ではありません。

しかし、教師のコミュニケーション能力は大切です。

普通、教師が質問をしながらレッスンを主導するからです。

さらに、生徒がする質問に快く答えてくれる教師がいいですね。

それは文法とかそういうたぐいの質問のことだけではありません。

「先生は何が好きですか。どんな人が好きですか。好きな映画は何ですか。昔の地元はどうでしたか」。

こういう種類の質問で、会話が盛り上がる先生でないと、直接法の場合、大変苦労します。

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マンツーマンレッスン

直接法の詳しい説明

直接法について詳しくまとめられた本が出版されています。もしよかったらご参考ください。

また、「直接法的な方法」というキーワードで検索すると、今回の内容と似た注意点が説明されています。

長い文章読んでくださり、ありがとうございました(^^)/

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