初めて子守をする(友人の子供を預かって子育て初体験、子供の成長や言語教育について)
皆さん、こんにちは。タイのチェンマイ在住、日本語教師もりすです。
コロナウイルスの影響は世界中に広まっていますね。
皆さんはどんな影響を受けていますか。
妻と私は、友人の子供を思いのほか長期間預かるという影響を受けています。
当初は3月15日から友人の子供を一週間預かることになっていました。この子の両親は、パスポート更新のためにミャンマーに過酷なバス旅行に出かけたのですが、コロナウイルスの流行によってタイ政府が鎖国状態になり、戻って来られなくなりました。それで5月3日現在も私たちは子守が続き、少なくとも5月いっぱいは両親が帰ってこないという長丁場になってまいりました。
この子供は6歳の女の子で、お父さんはミャンマー人(ミャンマー語と多少のタイ語)、お母さんは中国系ミャンマー人(中国語とミャンマー語)です。この子は普段、日中はタイ語の学校、夜は中国語の学校に通っていますが、3月4月はタイの夏休み、そしてコロナウイルスの影響で7月いっぱいは休校です。というわけで、一日中面倒を見なくてはなりません。
皆さんは、友人の子供を預かって子育てをしたことがありますか。しかも一日とか数日とかではなく、長い期間にわたって面倒を見たことがありますか。
今回は、6歳の子供が初めて親と離れて生活してどのように成長するのか、私が学んだことや観察したことを記事にしたいと思います。
預かった当初のマイちゃん
まずは、預かった一週目のこの6歳の女の子の状態から書きます。(最近はこの子をマイちゃんと呼んでいるので、以下はマイちゃんと呼びますね)
1.食べない。「少しもおいしくない、ウェー」が口癖。
2.多少食べるとしても、食べる時にふざける、テーブルは動物が餌を食べたような状態。
3.食事の時に座っていられない。食べる時も立ち食い。
4.おならやげっぷを人前ですることが大好き。
5.自分でシャワーを浴びることはできない。つまり、自分で自分の体を洗うことができない。なおかつシャワータイムは、ふざける時間。髪を洗うのが嫌いで、二日に一回。
6.長い髪が好きで髪を伸ばしているが、自分で髪を乾かすことはできない。
7.(長い時間がかかるほうの)トイレの後、臀部を拭いたことが一度もない。タイはトイレにミニシャワーが付いているので、それを使ってはいたが、下着を清潔に保つことは完全に不可。
8.自分の思い通りにいかないと、泣く。
9.夜、一人で寝ることができない。
10.夜中、必ず大声で寝言を言ったり、隣の人を蹴ったりする。
11.「こんにちは」「ありがとう」「ごめんなさい」を言えない。「これをちょうだい」ではなく、「これを食べる」と言う。
12.自分の名前以外、ほとんど中国語が書けない。学校ではピンインではなく、注音で発音表記を学んだようだが、基本的に覚えていない。中国語会話はほぼ問題なくできる。
13.タイ語の学習は嫌い。タイ文字は発音記号などが読めず、結果単語を読むことはできない。タイ語会話はほぼ問題なくできる。
14.親のタブレットで動画を見るのが好き。特に、Tiktokというアプリで、十秒ほどの短編動画をぼーっと見続けるのがお気に入り。
15.強度の偏食で、食べるのはお菓子全般と、卵(白身だけ)、鶏肉(皮以外。自分で切り分けることはしない)、まっさらなパン(裏が耳になっているものはだめ)、ケチャップ、セブンイレブンにあるCPブランドのミニソーセージ(焼くとだめ)、インスタントラーメン(味抜き)、気分によってときどき米。以上。
付加情報
上記の子守だけでもそんなに簡単ではないんですが、この子の家の管理を当初は住み込みで行っておりました。
1.家には、猫。この猫、外と中を自由に行き来して生活しています。ですから、朝起きたら、家の中にはネズミの死体が転がっていたり、外の餌置き場にネズミが入っていたり、昼間からトカゲを口にくわえて家に入ってきたりします。猫好きな人は「かわいい」とか言えるんでしょうが、家が汚れることが大嫌いな私と、猫アレルギーの妻にとっては、最悪の存在です。そのくせ、平気な顔で、汚い体で寄り添ってきたりします。猫好きな人、ごめんなさい。
2.家には、植物。家の周囲全体に植物。朝か夕方に必ず水やりが必要。家の中にも多少の植物。
3.家には、鶏。約15羽の鶏を養育。朝と夕方にトウモロコシやりが必要。暑いので、水はいつも要チェック。
4.もう一軒の家にも、鶏。庭に約15羽の鶏を養育。最低二日に一度トウモロコシやりと水やりが必要。
5.家のキッチンは、屋外。ただ屋外にあるだけでも日本育ちの私たち夫婦にはきついんですが、猫と鶏によってストレスが十倍。朝起きたら、ガスコンロの上には猫の毛が。猫好きな方、ごめんなさい。
勉強とは何かを教える
さて、せっかく子守をしますので、マイちゃんに中国語を教えることにしました。といっても、会話は基本的に問題なくできますので、漢字だけ教えます。
まず一回目のレッスン。
机とえんぴつ、ノートを出させ、座って集中するところからトレーニング開始です。
しかし本人は意外と楽しそう。
自分が書ける字を一生懸命自慢してきます。
それに対して、私はひたすら「すごいねぇ×10……」
そして、「じゃあ、今日はこれを書いてみようね」
という感じでほめながら簡単な漢字を少しずつ教えます。一日3つくらいずつですね。
お父さんお母さんの名前、私と妻の名前、「見る」「読む」「聞く」「本」。
遊び感覚で、あまり怒らずに、本人が書きたい回数だけ書かせます。
そしてレッスンが一週間たったころ、子供が好きなあの言葉を言ってあげます。
「明日は午後○時からテストをしましょう。昨日までの漢字だけ。しかも問題を今教えてあげるね」。
これまた本人は意外と驚かず。
うれしそう。しかも、なぜか余裕を見せてきます。
そこで、一応マイちゃんにこう伝えます。
「テストだからね。テスト中は一切教えないよ。何かを見ることも禁止だよ?」
それでも、少しおどけた感じ。
その後は予習することもなく、動画を見始めます。
テスト当日。もう一度「今日はテストだね~予習してね」と勧告。しかしマイちゃん、やはり予習はしません。
予告していたテストの時間。「さあ、テストだよ~」。
マイちゃん、漢字を書き始めるんですが、なんとほとんど漢字を覚えていません。
「ねえねえ、これで合ってる?」と何度も質問してきます。
しかし私は、「テスト中だから答えられないよ」とだけ言います。
テスト終了、答え合わせ、結果は6問中1問正解。
「あら、マイちゃん、1問だけ正解だったね。どうして全問正解できなかったと思う?」
「……」
「理由は1つだけだよ。残念だけど、努力が足りなかったということ。それだけだよ。人によっては5回漢字を書くだけで覚える子もいれば、100回書かなきゃ覚えられない子もいる。マイちゃんは何回書けばいいと思う?」
「(泣き始める)」
「マイちゃんのノートを見る限り、最低25回書くと覚えるみたいだよ。だから、これからは25回書こうね。テストの結果を見れば仕方がないね」。
この機会に、本来持つべき学習時の態度を教えます。
ノートのマスを無駄に使わないこと。
漢字を書くときは、覚えようという気持ちで書くこと。
文房具で遊んだり、壊して遊んだりしてはいけないこと。
人には皆仕事があり、マイちゃんの仕事は勉強であること。
勉強できることを感謝すること。働いている子もいっぱいいる。
その後、マイちゃんは泣きながら、テストで間違えた漢字を25回書きました。しかし、全部を書き終えることはできず、次の日に持ち越します。
さて、ここからが心の教育開始です。
うそをついては決していけないことを教える
テスト翌日。
マイちゃんは、テストで間違えた漢字の続きを書くことを渋ります。
一生懸命気を引こうとして、ちょっかいをかけてきます。
しかし私は常に同じ反応、「漢字は書き終わったかな?」
マイちゃん、字を書かずに一時間半が経過。
「漢字は書き終わったかな?」
「(大泣き)」
「どうして泣くのかな?」
「(大泣き)」
「一時間半何をしていたのかな?」
「(大泣き)」
30分が経過。
「どうして泣くのかな?」
「ノートの色が違う。文字が小さくていやだ」。
「分かった。じゃあ、文字を大きくしてあげるね」。
「(大泣き)」
マイちゃんは、そのままノートをぐちゃぐちゃにしたり、消しゴムをコップの中に入れたりして、怒りを物にぶつけ始める。
「何をしてるのかな? ノートは何か悪いことをしたかな? 水をせっかく入れてもらったのに、誰が汚くしたのかな?」
「(大泣き)」
ここから1時間が経過。今度は、ふて寝開始。
「漢字は書き終わったかな?まだ謝る言葉も聞いていないよ?なおさら寝る時間ではないよ?」
「(再び大泣き)」
ここから先は、マイちゃんは何も食べずに、ひたすら泣き続け、ほとんど同じ会話の繰り返しです。
その夜。
「マイちゃん、今日は悪いことをしちゃったね。ノートとか水とか、どうなったか覚えてるよね?」
「(横に首を振りながら、大泣き)」
「覚えてないのかな?」
「(首を縦に振る)」
「じゃあノートの色が違うし、文字が小さくていやだと言ったのは覚えてるね?」
「(横に首を振る)」
しかし、その二時間後。
マイちゃんは実は出来事全部覚えていることを白状します。
というわけで。
「マイちゃん、今日は一人で寝ようね。謝ること、うそをつかないことはとても大切なんだよ。今、ちゃんと謝れるかな?」
「(大泣き)」
約二時間、結局「ごめんなさい」を言えず。
マイちゃんは一人で寝ることに。
泣き疲れたので、あっさり一人で眠ります。
そして、次の日、その次の日とほぼ同じ状況が続きます。その間、いっさい勉強も教えず、一緒に遊んであげることもしません。
テストから4日後。ようやく初めて、マイちゃんが自分の口ですべてを白状し、「ごめんなさい」を言います。
うそをついてから4日間。もちろん、マイちゃんはうそをつきたくてついたわけではないでしょう。それでも、やるべきことをふざけずに先に終わらせること、うそをつくのは良くないこと、謝るべきこと、こういう考え方を心に植え込むには、教える側が一貫して基準を曲げずに根気強く接しなければなりません。
そろそろいいかな、もうわかったかな、と子供のポテンシャルを甘く見てはだめだと思います。子供は大人の意志や根気をよく見ています。
その証拠を以下書いていきます。
勉強ができるようになる喜び、自分で自分のことができる喜び
マイちゃんはこの4日間、勉強の時に適当な態度をしているとなにもいいことがないのを感じ取りました。
勉強の時はただ教えるだけではなく、勉強の後は必ずちょっとした遊びを一緒にしてあげますので、マイちゃんは勉強をさっさとしたほうがいいことを学びました。
それに、書ける漢字が増えたことで、本人も勉強が楽しくなってきました。
駆け引きをすることもしなくなりました。
勉強の時間には、自分から道具を準備して漢字を書きます。
子供が、自分は教えてもらう立場であることを意識することはとても大事ですね。
でも、勉強だけではありません。
朝自分で顔を洗い、卵を黄身も食べるようになり、「少しもおいしくない」ではなく「少しだけおいしい」と表現するようになり、食事の後に洗い物をすることを覚え、感謝や謝罪をすぐに言うことを身に着け、自分で自分の体を洗い、 座って食事をし、おならをするときは遠くに行き、大泣きすることがなくなり、夜中は一人で寝るようになりました。
子守において大切なのは、最初はトレーニングしてあげること、何が善で何が悪かをはっきり教えること、努力は本人のためになることを意識させること、気持ちをいつも根気強く聞いてあげることですね。
子供の可能性は計り知れないです。
今では、マイちゃん、たくさんの漢字を書けるようになり、日本語も少し話せるようになり、「ありがとう」「いただきます」などをよく口にします。
何よりも、マイちゃんは愛されて面倒を見てもらっていることを感じ取っているようです。
愛の力、教育の力、一貫した理念の力で、子供は一か月半でこれほど変化するんですね!
ちなみに妻と私はやはり猫に耐え切れず、最近は自分の家に戻って子守をしています。猫と鶏がいない生活はとてもいいですね!
長い文章ですが、読んでくださり、ありがとうございました(^^)/
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